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盆栽情報館

今まで当園にご連絡が多かったものを質問を下記にまとめております。
必要に応じて、ご利用頂ければ幸いです。
※2010年1月下旬に、より細かい内容をまとめた盆栽情報館へリニューアルを行う予定です。



■盆栽とは
「盆栽」とは、小さな鉢の中に壮大な自然の景色を創造し、その過程をも楽しむ芸術作品です。
観葉植物や鉢植でも、見た目の花の美しさや緑の瑞々しさなどの植物美を鑑賞して
楽しむことはできますが、四季を通して自然が織り成す美しい変化や、
植物が持つ生命の鼓動といった自然美を鑑賞できるのは盆栽だけが持つ魅力です。
また、毎日の水やりに始まり、剪定を施したり、針金を巻いて樹形を変えたりと、
育てる人の創作意図に基づいて変化する盆栽と向き合いながら自分の心を表現し、
育てる過程を楽しむことができるのも盆栽の魅力です。



■盆栽の歴史
盆栽の起源ははっきりとは分かっていませんが、中国で唐の時代に行われていた「盆景」が
平安時代に日本へ入ってきて始まったといわれています。
江戸時代になると様々な芸術が盛んになりますが、
盆栽もその一つとして公家や武士などの高尚な趣味として盛んになりました。
徳川三代将軍家光が盆栽を愛倍したことはよく知られています。
明治以降も粋な趣味として、時間的に余裕がある熟年層を中心に盆栽は広がりを見せ、
日本の四季豊かな風土と日本人の自然を愛する心が育んだ芸術として世界でも
高い評価を得るようになりました。海外での注目が高まると共に、
若者の間でも粋な趣味として再認識されるようになってきています。
近年では、小品盆栽やコケ盆栽など、盆栽を趣味にする若者も増えています。



■世界に広がる「BONSAI」
盆栽はもはや日本だけのものではありません。
第二次世界大戦後、東京オリンピックや万国博覧会などを機会に、
海外から日本への来日者が増えました。
海外の人にとって、自然美と情趣を楽しむ「盆栽」という日本人特有の
美しい繊細な心が育んだ芸術は大きな感銘を与えるものであり、
瞬く間に世界各国に「BONSAI」という名前で広がっていきました。
「BONSAI]は今や「JUDO」「SUMO」のように世界共通語になっており、
世界各国で盆栽専門誌が発行され、盆栽美術館も建造されるほどの存在になっています。



■盆栽の魅力
様々な魅力がありますが、特に下記4点を紹介させて頂きます。

1:自然が織りなす美しい変化
盆栽の一番の醍醐味は、小さな鉢の中で壮大な自然の景色を楽しむことにあります。
育てる自然環境により盆栽は大きな変化を見せ、自然環境に合わせ育ちます。
風当たりの強い場所で育った盆栽は幹が傾き、幹に圧力がかけられた環境で
育った盆栽は幹が下に伸びるなど、生きていくためにその容姿を大きく変化させます。
日本は四季の豊かな風土であり、季節によって変化する盆栽の表情も存分に楽しむことができます。

2:個性を表現し、育てる楽しみ
盆栽を育てるにあたって、特別な道具や設備は必要ありません。
毎日の水やりだけでも盆栽は育ちますが、せっかくならば自身の個性を表現してみてはいかがでしょうか。
ハサミで剪定を施したり、鉢を植え替えるなど、イマジネーションを働かせ、
自分の描いた理想のイメージに近づける喜びが盆栽にはあります。
盆栽を育てるということは、一種の創作活動ともいえます。
自分が注いだ手間と愛情に応えてくれるのが盆栽ですから、
世界に一つだけの貴方だけの盆栽をぜひ育ててみてください。

3:自分と向き合うことで人生を見つめなおす機会の創出
盆栽は自分を映す鏡だとよく言われます。
ストレス社会において嫌なことがあったときですら、盆栽に触れているときは「無」になれるものです。
その瞬間は精神のストレッチの時間であり、自分と向き合える大切な時間になります。
1日に1度はそのような時間をもつことによって、改めて自分というものを見つめなおすことができます。
また、盆栽は育てられる環境によって姿形を大きく変化させるものですから、
盆栽には自ずとそれを育てる自分自身が現れてきます。
葉が枯れるようであれば、それは自分自身の日々の習慣性の無さを感じるきっかけになるかもしれません。
幹模様や枝ぶりに欠点があると思えば、自分自身の欠点を考えるきっかけになるかもしれません。
盆栽の欠点は針金などで矯正できますし、このような作業を自身の人生に投影させてみることで、
自分自身に対して新しい発見があるかもしれません。

4:一生涯の趣味に
盆栽の寿命は驚くほど長く、100年以上のものもざらにあります。
日当たりと風通しのよい環境を作ってあげれば、それほど大きな負担もありません。
水やりは適度な運動にもなり、健康を維持しながら一生涯の趣味として続けることができます。
これから先何か一つずっと続けられるものとして、盆栽は最適だと思います。



■盆栽の育て方について
丈夫で健康な盆栽を育成するには、大きく3つ必要な作業があります。

【1:置き場所】
◎日当たりがよい場所
→1日数時間は日光があたる、日当たりのよい場所が適しています。

◎風通し・水はけのよい場所
→元気な盆栽を育てるためには、風通しのよい場所が適してます。
ジメジメしていると害虫も入りやすくなるので、水はけのよさも大事です。

◎室内で管理する場合
→本来は屋外での育成が適していますが、気をつければ室内でも管理できます。
その際は、日が差し込む窓辺に置き、夏は西日が当たらない場所に、
冬は暖房の影響を受けにくい場所に置いて下さい。
また、週に何度かは天気の良い日に外に出し、日光に当ててください。

【2:水やり】
◎水やりのタイミング
→毎日1回は乾き具合をチェックして、表土がうっすらと乾いてきたところで水をあげてください。
常に土が湿っている状態だと根腐れや病気の原因になります。

◎水のあげ方
→樹の根元に、鉢の底穴から水が流れ出るほどたっぷり与えてください。
<水がなかなか浸透しないときは…>
コケや土が固かったり、鉢の中が根でいっぱいの場合は水が浸透しにくく、
数回に分けて水やりを行わねばならない場合もあります。
そんなときにはバケツに水をはり、鉢ごとつける方法もあります。
ブクブクとした気泡がでなくなったら、水から引き揚げ、風通しのよい場所に戻して下さい。

◎季節毎の目安
 ○夏  :1日1回~2回。真昼は器の中の温度が上昇して根を傷める原因になるので避ける。
 ○秋・冬:1~2日に1回。
 ○冬  :2~3日に1回。夕方以降は凍りつきの原因になるので避ける。

【3:肥料】
◎肥料の必要性
→狭い鉢の中で育てられている盆栽は、光合成でつくられる養分や水だけでは満足に育成できません。
丈夫で健康な盆栽を育てるには、効果的な肥料の投与が必要です。
ですが、タイミングや量を考えなければ逆効果です。

◎肥料の種類と与え方
→肥料には「液体肥料」もありますが、一般的に「置肥(おきひ)」と呼ばれる固形肥料を使います。
置肥は置くだけなので簡単で、水やりの度に少しずつ肥料分が溶けだし、栄養を与えます。
液体肥料は、施すとすぐに水に溶け、イオンになって吸収されるので即効性はありまが、持続性に欠けます。

◎肥料を施すタイミング
→成長のために栄養が必要な春と、冬を越すための栄養を蓄え始める秋が中心になります。
これから盆栽づくりをしていく若木には、春から十分に肥料を与え、
樹形づくりに耐えるような力をつけてやります。枝の密生した成木などは、春に施肥をすると
枝が太くなりすぎるので控えめにし、梢が伸び止まってから施します。
梅雨時や真夏の高温期、植物が弱っているときは与えないようにしてください。

【4:病気対策・害虫対策】
土の水はけが悪かったり、一部の葉や茎が病気になっているのをそのままにしておくと、
盆栽も病気になってしまいます。
病気の葉や茎を発見した場合は、殺菌スプレーを投与したり、速やかに摘み取るなど、
被害が広がる前に必ず対処してください。
害虫がつくこともありますが、その際は殺虫剤・防虫剤が有効です。
盆栽の病気・害虫対策に一番大切なのは、日々の管理の仕方ですので、
水はけ・風通しには特に気をつけて管理してあげて下さい。

【5:盆栽を植える土】
盆栽用土には様々な種類があり、盆栽の樹種により好む土質は変わってきます。
盆栽用土には、赤玉土・天神川砂・黒土・鹿沼土・桐生砂・腐葉土などがあり、
それぞれ性質が異なりますので、樹種により土を配合して使います。
盆栽用土として最低の条件をあげるならば、保水力があり、排水性がよく、通気性もよいことです。

<五葉松に適した土>
赤玉土7と桐生砂または天神川砂3程度の割合がおススメです。
五葉松はもともと高山性の植物なので、黒土をを使用せず、排水性をよくしてあげてください。

【6:植え替え】
盆栽は鉢の中で生育を続けるため、伸びすぎた根を切り詰め、
新しい用土に植え替えてあげる必要があります。それを怠ると、
鉢内に根がぎゅうぎゅうに詰まってしまい、
水の通りが悪くなってしまい、枯死を引き起こす可能性があります。
そこで、植え替えにより発根を促し、新しい用土に替えてやることで、
通気性と排水性をよくしてあげることが必要です。
植え替えは樹種によって異なりますので、ここでは基本的な部分をご紹介します。

<植え替え時期>
植え替えの適期は、樹種や鉢の大きさなどによって異なりますが、多いのは、
春に芽がふくらみ始め、緑色がかってきた3月中旬頃です。
2~3年に1回というのが植え替え周期の目安です。
また、鉢土の状態で下記のような状態ならば植え替えをしてあげましょう。
・鉢土が硬くてカチカチになっている
・水がなかなか浸透しない
・鉢から土が盛り上がってきた
・鉢の底から根が伸び出している

【7:植え替え方法】
7-1:鉢から抜く
植えかえ前は前日から水やりを控えて乾燥ぎみにしておき、鉢から植物を抜きやすくします。
鉢の回りをたたいたりしながら、丁寧に鉢から抜きます。抜きにくい場合は、
鉢の縁よりもすこし内側にカマなどを入れ、薄く隙間を空ければ抜けます。

7-2:根をほぐす
根を気づ付けないように丁寧に素早く底根~横根をほぐしていきます。
作業中に根が乾燥するようならば、霧水を与えてください。

7-3:根を切る
全体の2割~5割程度ハサミで切り詰めます。
上の方からハサミを入れ、順次回しながら下の方へと円を描きながら切っていきます。
余分な根を切り落とすことで、根からの栄養吸収も活発になります。

7-4:植え付ける
根を整理した樹をすり込むように用土に馴染ませます。
この時、樹の据え付け角度を間違えないように気をつけます。
樹が安定したら鉢穴から通した針金で根を固定します。
そしたら残りの周りに用土を入れ、竹箸などでつつき、隙間にも用土が入るようにします。
用土は鉢のぎりぎりまで入れるのではなく、1センチほど余裕をもたせ、
水やり時に水が溜まるスペースを確保しておきましょう。
最後は、鉢穴から流れ出る水がきれいになるまで、たっぷり水をあげてください。

【8:剪定】
樹は生きていますから、生長と共に大きくなっていきます。
樹姿を乱すような枝は剪定して整え、樹全体に日が当たり、風通しがよくなるようにします。
生長に応じて剪定を行い、樹形の維持に努めましょう。

剪定は奥が深く、詳しく知りたいという方には盆栽の専門書をおススメします。
ここでは、一般的な流れについて記述します。

8-1:樹形構想を練る
将来どんな姿の盆栽に仕立てたいかを考えます。

8-2:役枝を決め、不要枝を切る
樹形構想が決まったら、枝順を考えて不要な枝を剪定していきます。

8-3:芽のあるところで切る
切った後に芽が吹かなければ枝が枯れてしまうので、枝を切り詰める際には、
「芽のあるところで切る」が剪定の基本になります。
その際、枝を根元から切らずに5ミリ~1センチほど残して切ります。
元から切るとそこから枯れこむ恐れがあり、伸ばしたい枝が影響を受けないようにするためです。

8-4:切り口の処理
枝を切り落としっぱなしにしておくと、そこから樹液が流れ出して樹が弱ったり、
傷口が早く回復するように、カットパスターなどの癒合剤を塗布しましょう。
焼けこんで樹を弱らせたりします。

なお、松は春先に伸びる芽摘みの作業と冬に行う前年の葉をカットする
葉刈りの作業がメインになります。



■盆栽の樹形について
盆栽の基本樹形は、幹の姿や幹の数、根姿によって、下記7つに分類することができます。

1:模様木(もようぎ)
幹がゆるやかな曲線を描きながら伸びている樹形です。模様とは幹の曲折の事を示します。
自然界の中では、より多くの日光を浴びたり、風を避けたり、
他の木々や建物の陰から逃れたりする生長過程によって生じるものです。
模様木は五葉松の中でも一番人気のある樹形であり、王道の樹形とも言えます。

2:双幹(そうかん)
1株の根から2本の幹が出ている樹形です。2本の幹のバランスを保つところに、
双幹の調和した美しさを感じることができます。
2つの枝のバランスを保つことが難しく、その分そこにやりがいを見出す人も少なくありません。

3:文人(ぶんじん)
細い幹にわずかに味わいのある曲がつき、枝葉が少なく、無駄なものが削ぎ落とされた樹形です。
細幹のまま長い年月生育させなければならず数が少なっており、根強いファンに支持されています。

4:斜幹(しゃかん)
幹が斜めに倒れたような姿で伸びている樹形です。
海岸や山沿いの斜面など、強い風が一定方向から吹き付けるために斜めに伸びた樹形を表現したものです。

5:懸崖(けんがい)
幹や主枝が鉢よりも下方に伸びている樹形です。
断崖絶壁のような自然環境の厳しいところに生え、
風雪によって幹が根元から上に伸びることができない樹形を表現したものです。
やりがいが一番大きいですが、安定感を保つことが難しいなど、
どちらかというと上級者にお勧めかもしれません。

6:直幹(ちょっかん)
根元から樹芯部に向かって幹がまっすぐに伸びている樹形です。
根が四方に張り、立ち上がりから上にいくにつれて細くなっていきます。
障害物などがなく、自然環境のよい平地で育っている樹木の姿です。

7:ほうき立ち(ほうきだち)
ほうきを逆さに立てたような樹形です。幹はまっすぐに立ち上がり、
途中で何本かに分かれ、どれが芯なのかわからないような姿です。



■盆栽についてのQ&A

Q:盆栽に寿命はあるのでしょうか?また何年くらい楽しめるものでしょうか?
A:多くの盆栽が2年に1回が植替えの目安です。
育て方の3つの基礎をしっかりしていれば、何年も何十年も楽しめます。

Q:長期出張や年末年始の帰省の場合の水やり方法について教えてください。
A:春・秋は、 日陰の涼しい場所に置き、鉢を濡らしたタオルなどで包むと3~4日間は持ちます。
しかし、あまり頻繁にやると弱ってしまうことありますので注意してください。
夏は、日陰の涼しい場所または室内(お風呂場等)に置き、
鉢を浸け置きすると2日間程度は持ちます。
しかし、あまり頻繁にやると弱ってしまうことありますので注意してください。
ご家族、近所の方に水やりの相談をしてみることをお勧めします。
冬はたっぷり水を与えると3日程度は持ちます。

Q:室内で育てたることは可能でしょうか?
A:はい、可能です。2~3日室内なら2~3日は外で日光を与えるように心掛けてください。

Q:盆栽を育てるには、ピンセット、霧吹き等は必要ですか?
A:どうしても必要なものではありません。しかし、それぞれの適切な役割があり、
より盆栽を楽しむ方には持つことをお勧めします。詳細は「■必要なもの」をご参照ください。
最初から準備することなく、必要に応じて準備する形で問題なく、類似のもので代用も可能です。



■必要なもの
盆栽を育てる上で絶対に必要な道具はありません。
自分なりに工夫して、代用品を見つければそれで十分です。
ここでは、あると便利な道具を紹介します。
いずれもホームセンターで購入できるようなものばかりです。

1:ジョウロ(如雨露)
盆栽手入れの基本である水やりに使用します。
細かく一様な水がでる如雨露を持っておくと大変便利です。
本格的なものには、銅製如雨露をお勧めします。銅には殺菌作用があり、
常に新鮮な水を盆栽に与え続けることができます。

2:霧吹き
主に盆栽の葉に水を与えるために使用します。如雨露よりも細かく、
葉への水分補給と葉の表面の掃除をしてあげることができます。
葉が乾き やすい夏場は、補足的に葉水を行います。

3:剪定バサミ
葉や枝を切り、自分の描く理想の盆栽にするために使用します。
剪定バサミではなくても、ステンレス製のクラフトバサミでも大丈夫ですが、
盆栽用のハサミは切れ味が鋭く、盆栽を育てる方ならば一つ持っておいて損はありません。
また、ハサミは盆栽道具の中でも用途によりにたくさんの種類がありますので、
盆栽が増えてきたら、揃えていくのもいいかもしれません。

4:ピンセット
細かい部分の葉や雑草を抜いたり、古葉を取り除いたりするときに使用します。
また、害虫の駆除などにも活躍するなど、日々のちょっとしたお手入れにも何かと便利なので、
ぜひ揃えておきたい道具です。

5:肥料
盆栽の生育をよくし、抵抗力をつけるなど、盆栽の健康を維持するために使用します。
適切に肥料を与えてあげることで、根の張り、葉の色の濃さなど、元気な盆栽が育ちます。
またアブラムシなどの害虫がよりにくくなるので、手入れも楽になります。
肥料は基本的に土の上に置くだけなので、とても手軽で安心です。



<園主からのアドバイス> 専門の道具はたくさんあり、低価格から高価格なものまで様々ですので、
必要に応じて自分に合った使いやすいものを選ぶことが大切です。
何より盆栽を育てる上で一番大切なものは、盆栽を慈しむ心です。

なかの人